文字に興味を持たない・ひらがなを覚えにくい

3〜5歳(園児)、6〜8歳(小学校低学年)
まわりの子が字を読んだり、名前を書いたりしはじめた。なのに、うちの子は文字に興味を示さない。教えようとすると、すぐ嫌がる。覚えても、すぐに忘れてしまう。
ひらがなを覚える時期は、子どもによってとても違います。ここで紹介する日本の大きな調査は、1967年と1988年のものです15。このあいだに、読み書きとも1年近く早くなっていました10。数字は、当時の目安として見てください。
1988年の調査では、3歳児クラスから5歳児クラスにかけて、読める字が大きく増えていました1。ただ、平均だけを見ると誤解しやすいものです。読める字の数は、「ほとんど読まない子」と「ほぼ全部読める子」に分かれていました2。月齢で見ると、読める字の割合の平均が71文字の半分を超えたのは、4歳8か月ごろでした11。
1967年の調査でも、多くの子は4歳から6歳ごろまでの長い期間をかけて覚えていました5。5歳児クラスの11月から3月までのあいだにも、大きく伸びていました6。
書くことは、読むことよりあとから身につきます34。1967年の調査では、鏡文字が、幼児の書きまちがいでいちばん多いものでした12。ニュージーランドの研究では、5歳から読みを習った子と7歳から習った子の差は、11歳までに見られなくなっていました13。
1967年の調査では、多くの親が、子どもが自分から覚えるのに任せていました。そして、必要なときに少し手を貸していました8。幼稚園教育要領も、生活や遊びのなかで文字に親しみ、興味を育てることを大切にしています9。名前や身の回りの文字、お手紙ごっこ、絵本など、文字が楽しく役に立つ場面を、無理のない範囲で増やしてみてください。
書ける字は、字の形も書き順も正しく書けたもの。平均の年齢は、3歳児クラスで4歳2か月、4歳児クラスで5歳2か月、5歳児クラスで6歳2か月です。古い調査なので、今の子とは違うかもしれません。東京都・愛知県の保育所と幼稚園の1,202人を調べた1988年の調査より。
同じクラスでも、ほとんど読まない子と、ほぼ全部読める子に分かれていました。平均だけでは、一人ひとりの様子はわかりません。1988年の同じ調査より。
考えられる理由
試せる工夫

名前の文字と、身の回りの文字に気づく
名前や身の回りの文字から、文字に気づくきっかけをつくりたいとき

文字で伝える遊び(お手紙ごっこ・買い物メモ)
文字を「覚える」より、「伝わる」楽しさを味わってほしいとき

問いかけながら読む絵本(対話的な読み聞かせ)
絵本の時間に、ことばのやりとりを増やしたいとき(文字を覚えるための方法ではありません)

手を使う遊びを、毎日の遊びに混ぜる
書くのを嫌がる、鉛筆を持つのがまだ難しいとき
止める・変える目安
- 文字の話になると嫌がるときは、しばらく文字から離れて、絵本や遊びを楽しむ
- 書くのを嫌がるときは、大人が書くだけにする。子どもは絵だけでも、渡す役だけでもよい
- 問いかけが多すぎて、子どもが絵本を楽しめていないときは、ふつうに読むだけに戻す
- 子どもが先を読んでほしがっているときは、問いかけをやめて読み進める
- 嫌がったり、疲れた様子があったりしたら、その日はおしまいにする
家でできるあそび

お絵かき・なぐり描き
大きな紙に、太いクレヨンや指で、思いのままに描く遊びです。

ことばの音あそび
ことばを音に分けて手拍子をしたり、同じ音で始まることばを探したり、しりとりでつないだりする遊びです。
出典
島村直己、三神廣子. 幼児のひらがなの習得―国立国語研究所の1967年の調査との比較を通して―. 教育心理学研究, 42(1), 70–76, 1994. p.71「方法」、p.72(平均読字数)
島村直己、三神廣子. 幼児のひらがなの習得―国立国語研究所の1967年の調査との比較を通して―. 教育心理学研究, 42(1), 70–76, 1994. p.72 TABLE 3、FIGURE 1
村石昭三、天野清. 幼児の読み書き能力(報告要旨)昭和42年度「就学前児童の言語能力に関する全国調査」. 国立国語研究所, 1972. p.11 第1図と本文
島村直己、三神廣子. 幼児のひらがなの習得―国立国語研究所の1967年の調査との比較を通して―. 教育心理学研究, 42(1), 70–76, 1994. p.73〜74(平均書字数)
島村直己、三神廣子. 幼児のひらがなの習得―国立国語研究所の1967年の調査との比較を通して―. 教育心理学研究, 42(1), 70–76, 1994. p.75 考察
村石昭三、天野清. 幼児の読み書き能力(報告要旨)昭和42年度「就学前児童の言語能力に関する全国調査」. 国立国語研究所, 1972. p.15〜16 要因④
村石昭三、天野清. 幼児の読み書き能力(報告要旨)昭和42年度「就学前児童の言語能力に関する全国調査」. 国立国語研究所, 1972. p.14
村石昭三、天野清. 幼児の読み書き能力(報告要旨)昭和42年度「就学前児童の言語能力に関する全国調査」. 国立国語研究所, 1972. p.13
村石昭三、天野清. 幼児の読み書き能力(報告要旨)昭和42年度「就学前児童の言語能力に関する全国調査」. 国立国語研究所, 1972. p.15〜16 要因⑤
村石昭三、天野清. 幼児の読み書き能力(報告要旨)昭和42年度「就学前児童の言語能力に関する全国調査」. 国立国語研究所, 1972. p.15〜16 要因⑦
幼稚園教育要領(平成29年3月告示). 文部科学省, 2017. p.5 第1章第2の3(8)、p.15 領域「環境」内容(10)と内容の取扱い(5)、p.17 領域「言葉」内容の取扱い(5)
島村直己. 文字習得のふしぎ. 国立国語研究所創立50周年記念 研究発表会資料集『歩こう日本語の世界を』pp.209–214(国立国語研究所創立50周年記念事業実施委員会), 1998. p.210 表1と本文
島村直己、三神廣子. 幼児のひらがなの習得―国立国語研究所の1967年の調査との比較を通して―. 教育心理学研究, 42(1), 70–76, 1994. p.72 TABLE 2「読字率の月齢発達」と本文
村石昭三、天野清. 幼児の読み書き能力(報告要旨)昭和42年度「就学前児童の言語能力に関する全国調査」. 国立国語研究所, 1972. p.24
Suggate, S. P.、Schaughency, E. A.、Reese, E.. Children Learning to Read Later Catch up to Children Reading Earlier. Early Childhood Research Quarterly, 2013. 抄録